清元「玉屋」

日本舞踊のぬりえ「清元 玉屋(たまや)」の解説です。

子どもたちに大人気だった「しゃぼん玉」を売って歩く「玉屋」が、和傘と、しゃぼん玉の入った箱・吹き棒を手に子どもたちを呼んでいます。
傘や着物には水玉模様がたくさんあります。いろんな色を使って塗りわけても楽しそうですね。

目次

・「清元 玉屋(たまや)」ぬりえの解説

・「清元 玉屋(たまや)」ってどんなはなし?

・100%天然素材!江戸時代のしゃぼん玉

さあさあ、よってらっしゃい、みてらっしゃい。
ちかごろ まちで ひょうばんの「しゃぼんだまうり」だよ。
ほら、きれいなしゃぼんだまが、ふわふわり。そらにうかんで
たのしいだろう。ひとつ、かっていかないかい?

Come on out everyone. Take a good look. Here are the popular “bubble stall” that everyone in town likes these days.
Look, the beautiful bubbles are up in the air. Isn’t it fun that bubbles float in the sky. How about you buy one and give it a try?

ポルトガルからシャボン玉が日本に伝わったのは、江戸時代。当時の風俗を伝える書物には、子どもたちが玉屋を取り囲んでいる、ほほえましい絵が載っています。昔のこどもたちもシャボン玉に夢中になっていたんですね。

音楽について

清元って?・・・浄瑠璃という人形劇の音楽として生まれました。叙情的、技巧的、洗練された高音が特徴です。細棹~中棹の三味線を使用します。歌舞伎にもよく登場します。

「清元 玉屋(たまや)」ぬりえの解説

踊りのポイント

玉屋では、いろんな小道具が出てきます。「傘」「しゃぼん玉の箱」「吹き棒」イラストには出てきませんが、「差金蝶々(ちょうちょのおもちゃ)」・・・
道具を持ってかっこよくポーズをきめたり、かざしたり、床に置いたり、いろんな動作が出てくるので、よく道具に慣れるのが大事です。

また、「玉屋」には、セリフがあります。

「サァサァおなじみの玉屋でござる お子さま方のお慰み 何でもかでも 吹き分けてご覧に入れましょう 先ず玉の ャ始まりは」

*流派によって異なる場合がございます

セリフもじょうずに言えるように、よく練習しましょう。

お着物のポイント

玉屋の着付けは、「縞と水玉の着付、東(あずま)からげ」「袖なし羽織」「頭巾・手甲・脚絆」です。

「縞と水玉の着付」です。玉屋の衣裳は縞だけ、水玉だけ、などいろんなパターンがあるようです。今回は、縞と水玉を組み合わせた柄を採用しました。

「東(あずま)からげ」とは着物の着方のひとつです。着物の両側の裾を持ち上げて帯にはさみます(からげる)。こうすると、イラストのように着物の裾が左右に開いて、足さばきが楽になります。これが「東からげ」です。玉屋のような物売りや、旅人などが「東からげ」をします。

「袖なし羽織」その名の通り、袖のない羽織です。玉屋のような「頭巾に袖なし羽織」は、「物売り」の定番衣裳です。

「頭巾(ずきん)・手甲(てっこう)・脚絆(きゃはん)」、読み方が難しいですね。頭巾はあたま、手甲は腕から手の甲まで、脚絆は下半身を覆う衣類で、寒さや日光を避けるために着用しました。玉屋は「夏の風物詩」でしたので、これらの衣服は見た目以上に、厳しい夏の日差しから身を守る、実用的な意味もあります。

「清元 玉屋(たまや)」ってどんなはなし?

町でしゃぼん玉売り歩いた玉屋が主人公です。舞台に登場すると「サァサ寄ったり見たり 吹いたり評判の玉や(さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。ちかごろ まちで ひょうばんの『しゃぼんだまうり』だよ。)」と言って、子どもたちを呼び集めます。

人だかりができたら、玉屋はおもむろにしゃぼん玉を吹き始めます。「玉」にかけて、「肝っ玉」「鉄砲玉」「そろばん玉」「数珠玉」など連想ゲームのように踊り分けていきます。
途中で、「蝶々売り」が登場したり、江戸の労働歌「木遣り唄」が出てきたり、とても賑やかで楽しい曲です。

江戸時代の、天然素材のしゃぼん玉

家で、石鹸や洗剤などを使って、しゃぼん玉をつくったことはありますか?いまや100円ショップでも買えるシャボン玉ですが、昔はどうしていたのでしょう。

しゃぼん玉の歴史は古く、日本には戦国時代のころ(いまから400年以上前)ポルトガルから伝わったと言われています。当然、いまのような合成洗剤などはありません。そのころは「ムクロジ」という植物の実を使ってしゃぼん玉を作っていました。

ちなみに「ムクロジ」とは、お正月の羽根付きのおもりの、黒い玉にも使われているものです。漢字で「無患子」と書くので、「患いをしない」縁起の良いものとして、お正月に子どもたちが遊びます。

さて、ムクロジの実を水につけると、せっけんのように泡立ちます。この性質を利用して、しゃぼん玉液を作っていました。この泡にはサポニンという洗浄成分が入っていて、せっけんとしても使われていました。

ストローは、植物の葦の茎や、細い竹などを使っていたようです。100%天然素材ですね。

「清元 玉屋(たまや)」の歌詞

〽︎サァサ寄ったり見たり 吹いたり評判の玉や

商う品は八百八町 毎日ひにちお手遊び 子供衆寄せて辻々で お目に掛値のない代物を お求めなされと辿り来る

(〽︎サァサァおなじみの玉屋でござる お子さま方のお慰み 何でもかでも 吹き分けてご覧に入れましょう 先ず玉の ャ始まりは)

〽︎今度仕出しじゃなけれどもお子様方のおなぐさみ ご存じ知られた玉薬 鉄砲玉とはこと変わり 当たって怪我のないお土産で〽︎曲は様々

大玉小玉 吹き分けはその日その日の風次第 まず玉尽くしで言おうなら〽︎たまたま来れば人の客 などとじらせば 口真似の こだまもいつか呼子鳥 たつきも知らぬ肝玉もしまる時にはそろばん玉の 堅いおやじに輪をかけて 若いうちから 数珠の玉 オットとまった性根玉 しゃんとそこらでとまらんせ

〽︎とまるついでにわざくれの蝶々とまれをやってくりょ

〽︎蝶々とまれや菜の葉にとまれ菜の葉いやなら葭の先へとまれ それとまった 葭がいやなら木にとまれ

〽︎つい染み易き廓の水〽︎もし花魁へおいらんと 言ったばかり で後先は恋の暗闇辻行燈の陰で一夜は立ち明かし〽︎格子のもとへも幾度か 遊ばれるのは初めから〽︎心で承知しながらも もしやと思うこけ未練 昼の稼ぎも上の空

〽︎鼻の先なる頬かむり〽︎吹けば飛ぶよな玉屋でも お屋敷さんのお窓下 犬にけつまずいてオヤ馬鹿らしい

〽︎口説きついでにおどけ節〽︎伊豆と相模はいよ国向かい 橋を架きょやれ船橋を 橋の上なる六十六部が落っこった〽︎笈は流るる錫杖は沈む 中の仏がかめ泳ぎ〽︎坊さん忍ぶは闇がよい〽︎月夜にはあたまがぶらりしゃらりとのばサ頭がぶらりしゃらりと こちゃ構やせぬ〽︎衣の袖の綻びも構やせぬ しどもなや

〽︎折も賑う祭礼の 花車の木遣りも風につれ 〽︎オーエンヤリョー いとも畏き御代に住む 江戸の恵みぞありがたき。

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