清元「玉兎」
日本舞踊のぬりえ「清元 玉兎(たまうさぎ)」の解説です。
うさぎの恰好をした少年が、杵をもってお餅つきをしているところです。臼のそばにはたぬきがいます。昔話や伝説が組み合わさった内容で。あてぶり(物事の様子をそのまま振り付けたもの)も多く、とっても楽しい一曲です。
元気な男の子、かわいいタヌキ、背景も想像をふくらませて、自由に色を塗ってみましょう。
目次
・「清元 玉兎(たまうさぎ)」ぬりえの解説
・「清元 玉兎(たまうさぎ)」ってどんなはなし?
・本当はとっても悲しい?月の兎の物語とは?
ぼくは、つきからきた うさぎ。わるいタヌキは どこだ?ぼくがこらしめてやるぞ!
I am a rabbit and I came from the moon. Where is the bad racoon? I will teach you a lesson!
月の兎の伝説と、かちかち山の物語を組み合わせたストーリーです。お餅つきやかちかち山の登場人物の踊り分けなど、とても楽しい踊りです。衣裳は江戸の町の「お団子売り」の服装を取り入れたともいわれています。
音楽について
清元って?・・・浄瑠璃という人形劇の音楽として生まれました。叙情的、技巧的、洗練された高音が特徴です。細棹~中棹の三味線を使用します。歌舞伎にもよく登場します。
「清元 玉兎(たまうさぎ)」ぬりえの解説
踊りのポイント
臼のお餅を杵でついている場面です。「見得」「手の指」「足」に注目です。
男の子が「見得(みえ)」を切っています。「見得を切る(または、見得をする)」とは、盛り上がりや感情の高ぶりを示すために、ポーズをとって静止することです。格好も大事ですが、この男の子のように、「目」にも力を込めて、全身で「見得」を切りましょう。
左の「手の指」を見ると、親指を開かずに、ピタッと揃えていますよね。日本舞踊では、基本的にはこのように指を揃えて踊ります。指をそろえると、きれいにととのった印象になりますよ。「荒事(あらごと)」と呼ばれるような、勢いのある踊りでは開いて踊ることもあります。
上げた左足にも注目してください。こちらも指をそろえて、指先をピンと立てています。こうすると、元気がよく見えますよね。
このように、踊るときは、指先、足先にも意識を向けて踊ることが大事です。大変ですが、気を付けていると、だんだんできるようになりますよ。
お着物のポイント
「浅葱色の袖なし羽織」に、黒の「腹掛け」、真っ赤な「下がり」を身に着けています。
「浅葱色(あさぎいろ)」とは、植物の藍で染めた、鮮やかな水色のことです。
「袖なし羽織」とは、その名の通り、袖のない羽織のことです。いまでいうベストのような形をしています。「頭巾と袖なし羽織」は、「物売り」のシンボルなのですが、玉兎は、江戸時代の「景勝団子」というお団子売りの衣裳を参考にしていると言われているので、そこから来ているのかもしれません。
「腹掛け」は黒で、紅葉の模様が描かれていますが、特に決まりはなく、衣裳屋さんによっていろんな柄があります。
「下がり」とは、ふんどしという、昔の下着の前につけたものです。
「清元 玉兎(たまうさぎ)」ってどんなはなし?
月に兎が住んでいるという伝説と、カチカチ山のお話を組み合わせたストーリーになっています。
最初は月から兎がピョンと飛び出てきて、お餅をつくという演出が多く、かわいい、ユーモラスな振りが見どころです。
やがて、おじいさんおばあさんに悪さをするタヌキをこらしめる、カチカチ山の物語へうつり、タヌキのしょった柴に火をつけたり、やけどした背中に唐辛子を塗ったり、舟をこぐ、など、あてぶりが続き、踊っても、見ても、楽しい作品です。
本当はとっても悲しい?月の兎の物語とは?
「月の兎」はきいたことがあるでしょう。月の模様が兎に似ているということも、ご存じかもしれません。でも、形が似ているから、だけではなく、月の兎には、実はもっと深~いお話があるのです。
むかしむかし、一人のやせたおじいさんが、山の中でいまにも力尽きそうになっていました。
そこへやってきた猿と狐と兎は、おじいさんに何かしてあげようと考えました。猿は木の実を拾ってきて、狐は魚をとってきて、おじいさんにあげました。
しかし、兎は何も採ってくることができませんでした。自分の力のなさを嘆いた兎は、自らの身体を食べものとして捧げようと、たき火の中に身を投じました。
神様は、自分を犠牲にして人の役に立とうとした兎の行いを、広く人々に知らせるため、兎を月に上らせました。
これは仏教が伝える昔話ですが、このような伝説が生まれるほど、私たちの先祖の人たちにとっても、「月と兎」は身近なテーマだったのだと思います。
なお、お月見の習慣は、もともとは中国から伝わりました。日本では平安時代、貴族たちが月を見ながら音楽を演奏したり、お酒をのんだりするという形で始まって、徐々に庶民にも広まり、いまでは「月見団子」を食べる習慣として根付いています。
「清元 玉兎(たまうさぎ)」歌詞
千草(ちぐさ)も野辺(のべ)の通い路に、
色も香もある盛りの色を、
君が返事にあいの花、
こちゃこちゃこちゃ手折りて欲しや。
恋をする身はまがきの小菊、
露に葉ごとの濡れまさる、
ええ、濡るる、しょんがいな。
色香含みて愛らしき。
過ぎし弥生の桜時、花見の幕の垣間見に、
ふっと目に付く殿振に、
ぞっとするほど思いの増して、
胸に絶えせぬ綾瀬川、水に羽音の鴎をば、
都鳥とも名にこそ呼ばれ、
思いすごして今の身は、
ほんにつくづく山寺の、
憎い坊さんじゃないかいな。
恋にははずむ手まり唄。
ひとつとやのさのえ、一夜重ねて二夜三夜。
芝居噺に夜を明かす、墨田の上野の眺めにも、
心も浮いて物見行き、お宿下りに遅れ咲き、
これも世界の花ならん、しおらしや。
花に来て、秋の香慕う蝶胡蝶、
羽交い並べて乱菊の
花の露吸うしおらしさ、たわむれ遊ぶ。
きりはったりちょう、きりはったりちょう、
女夫ごと可愛ゆらし。
色という字はいたずらものよ、
無理な合図にせかせておいて、
嬉しい仲じゃと引き寄せて、
相合傘の濡れかかる。
それほど誠があるならば、
じつ誓文濡れしゃんせ、
いとしいの字の比翼紋、しおらしや。
げに月ならば、秋の最中の、名にし負う
笑顔も萩の下風に、露を厭うて道芝の
衣紋(えもん)直して急ぎゆく